引っ越し先の新しい保育園への入園が11月からなので、1週間ほど息子と共に実家に帰省することになりました。
実家の家族がハワイ旅行に行っている期間に合わせての帰省です。
父、母、妹、甥が旅行中の実家には、90歳の祖母、自衛官の弟、年寄りの猫がいます。
祖母は食事とお風呂に介助が必要だし、18歳の猫ももうヨロヨロで粗相をすることも多いのでその片付けなどもしなくてはいけないとのことで、私が呼び寄せられたわけです。
1年半ぶりの実家に帰り、まず猫を撫でました。
おじいちゃんになったね。
私ずっとここに居ないのに、まだ撫でるとゴロゴロいってくれるのすごくうれしい。ありがとう。
ここのお家に来た赤ちゃんの時と同じゴロゴロだね。きれいな茶色い毛も変わらないね。
名前を呼ぶと目を細めて微かにニャーと鳴きました。
この子はこの子は時間の流れの中で生きているだけ。その早さに怯んではいけない。老いを不幸だと決めつけるなんて愚かで幼稚なこと。
目やにで目が開ききらず、口の中がただれ、ヨダレが常時出ていたので、動物病院に行って薬をもらいました。
口が痛いらご飯もあまり食べられていなかったようで骨と皮の身体。
大丈夫大丈夫また元気になるよとその痩せた身体を撫でると、在りし日のたっぷりと肉の付いたこの子のことを思い出して鼻の奥がツンとしました。
毎年ハワイ旅行に行くお金はあっても猫を病院に連れて行くお金はない実家の人たち。
新しく飼ったトイプードルのトリミングには毎週行くのに。
それを不思議と思わない人たち。
だってもう年寄りだから仕方ない、病院代は高いし、どうせもう死ぬんだからと口に出して言うことに抵抗のない人たち。
私が払った動物病院代をしつこく聞き出し、金額と私の愚かさを、お前は頭がおかしいとあざ笑う人たち。
20年近く一緒に暮らしている家族なのではないの?
口の中がずっと痛いなんてとても辛いよ。
これからもっと子は何もできなくなる。
その時あなた達はこの子をどうするの?
聴きたいことは沢山あるけど、口には出せない。
これ以上絶望したくないから。
病院に相談して薬を多めに処方してもらいました。甘いシロップの薬。
猫の世話は母がしているのですが、私が帰った後も薬を飲ませるように弟に頼みました。
これで少しは楽になるといいけれど。
今も年寄りの猫は私の隣で寝ています。
田舎の静かなくらいくらい夜。
私はこの家が、家族が大嫌いで仕方がなった。この町も嫌いで仕方なかった。
何もない琵琶湖の湖畔の小さな町。
今見るととても美しい町。
窓を開けて夜の澄んだ空気を胸いっぱい吸い込む。
子どもの頃に嗅いだ秋の匂い。
時は残酷なほどにぐんぐん進んでいるようで、でもあるところではずっと止まっているようでもある。
時に翻弄されることはないよ。
猫が教えてくれる。
私もずいぶん歳をとったけど、それを悲しむべきじゃないよと。
猫も私も居なくなったこの場所で、やっぱり同じ秋の匂いがするのだろうから。