子どものいる生活

息子のこと、元夫のこと、私の生活のあれこれ。順風満帆。

2021-01-01から1年間の記事一覧

淘汰の日

お風呂から上がり寝るまでの時間は、息子とのんびり過ごす幸せなひととき。いつも絵本を読んだり、トランプをしたり、私が即興で作った童話を話したりする。 今日は息子が「お母さんの子どもの時の写真がみたい」と言ったので押し入れから古いアルバムを出し…

救急搬送

ガガガガガガガガ MRIの耳元で道路工事音されてるみたいな音に起こされて一瞬だけ意識が浮上する。 頭が割れるように痛い。 心臓の鼓動に合わせて後頭部がガンガンと痛む。 救急車で病院に搬送され、看護師に名前を尋ねられる前にもう「痛み止めをください」…

私の家族は

髪を剃り落とされた青白い頭皮には蛇の腹のようななまめかしさがあった。 その陽に晒されたことのない色のない薄い皮膚におそるおそる手を触れると思いのほか弾力があったので、数回ピタピタと叩いた。 もう全然痛くない。 風呂場の姿見の前で午前中に皮膚科…

いい父親でいて

どうしてこんなにイライラしてるのだろう私は。 何に怒ってるのだろう。 こんなに。 理由もわからないのに上唇が微かに震えている。 弟のLINEのアイコンが変わり、他人の名前になった。それを確認した時から上唇はもう2時間も震えている。 息子の部屋をイラ…

どうして人は別れると思う?

「どうして人は別れると思う?」 恋人の家の心地よい浴室でさっき言われたことを考える。 「ここは窓があるからいいね」 もう何回か言ったことがあることを初めてみたいに気にせずに口に出す。今またそう思ったから。 私は人との別れに興味がない。今そこに…

猫の話

息子を寝かしつけてリビングに戻るとカーテンの外された窓がもわりと明るい。その明るさに一瞬たじろいだあとに、ああそうか、昼間カーテンを洗ってベランダに干してあるんだと思い出す。 東京の夜は明るい。特に引っ越してきたこのあたりは深夜でも窓の外は…

父の声

気に入ったデザインのお洋服があったので色違いで4着買った。 白、紫、黒、紺のラインのきれいなシンプルなカットソー。 気に入ったお洋服が手元にあるのはうれしいし、こころが落ち着く。 郵送で届いたそれらを段ボールから取り出してクローゼットに仕舞っ…

雨の日の下校途中

横殴りの雨が降る中を息子の手を引いて歩く。 傘はさしていない。マッキントッシュのゴム引きのレインコートにレインブーツを履いているから横殴りの雨も顔がびしょびしょになるだけて頭や衣服などの濡れたら不快なものはすっぽりと快適に守られているから平…

小学生のいる家

息子が小学生になってから家がどんどん実家みたいになってゆく。 そんなふうにするつもりなんて少しもないのに、気がつけば、ごくごく自然に滑らかにそういうふうになっていた。 冷蔵庫に貼られた給食予定表を手始めに和室には運動会使ったポンポン、リビン…

ヒサコさん

子どもの頃、確か私が小学2年生の頃までは実家にお手伝いさんがいた。 そのころのうちは、祖父、祖母、父、母、叔父、私、妹、弟と8人家族で、しかも祖父も祖母も父も母も叔父も仕事をしていたので、家事育児を担う人間が必要だったのだ。 お手伝いさんは、…

通り過ぎるだけ

パンっと眠りから弾かれたように目が覚めた。 時計を見ると午前4時で、隣では息子がスースーと寝息を立てている。その闇に浮かび上がる白い頬がぷっくりとしていて愛おしい。 弟が亡くなってから朝方こんなふうに眠りから覚めることが多くなった。 弟が亡く…