子どものいる生活

息子のこと、元夫のこと、私の生活のあれこれ。順風満帆。

さようなら

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少し前に私の前の夫が亡くなりました。

長患いの末だったので、心づもりはしていましたし、驚くことではないのに、どうしても噓みたいと思ってしまいます。

 

彼の実家と仲違いして、鬼より怖い兄嫁と姑を敵に回し、私が興信所の探偵に尾行されるだけでは済まず、私の実家の家族もそれぞれ細やかに調べられ、政治家一家である親族の反社会勢力との繋がりを暴露され叔父が失職して週刊誌に載ったり、それでもぼんやり暮らしていたら、突然泊まり込みにやってきた無職の彼の親友だと名乗る薄汚い男から良き妻とはどんなものかと鳥肌ものの説教をされ、家出して、追いかけてきた自称親友に奥多摩の旅館に拉致され、浮気をでっち上げられ、助けに来たものの実家に逆らったことなんて生まれてこのかた一度もないおぼっちゃまである前夫には「もう何を信じていいのかわからない」など言われ、「何を信じていいかわからない?そう言ったの今?バカなの?だいたいあんたが10年来の内縁の妻(姑と兄嫁のお気に入り)がいることを隠して私に手を出して結婚するからこんなことになるんでしょう?しかもあんたたまこさん(元内縁の妻)に旅行中にゴミ捨てと家の掃除させてるでしょ?あれどうなの?新幹線で4時間かけてゴミ捨てと掃除しにくるのなんでだと思う?あんたに好かれたいんだよ。あの人は結婚せずに子どもを持つことも諦めてあんたに尽くしてきたんでしょう?それをよくもまあ、年に2度の海外旅行用家政婦みたいに使えるよね?鬼畜だよね。てか、まだ寝てるよね?あの人そのために来るんだよね?なんでバレてないと思った?わかるよ。あとさ、あのおまえの親友なんなの?誰あれ?『木村くん』じゃねぇよ。名前きいてるんじゃねぇよ。知ってるよ。なんで私があの人にとやかく言われなきゃいけないのかって言ってんの。なんであいつか私の帰宅時間とかさ、来てる服とかさ、作ってる料理を知ってるの?そんでダメ出しするの?ねぇ?あんたが教えたんでしょう?なんで?そんで、私があのおっさんに意味不明な説教されてる時に、あんたはおっさんの隣でフンフン頷いてんの?なんで?何?私の帰宅時間とか服気に入らなかった?どういうつもり?何なの?ここどこ?」

「ごめん」

「何がだよ?」

「母が君のことを心配して、まだ若いから、木村くんならいろいろ教えてくれるだろうって。悪気はないんだ。ここに連れてきたのも君を落ち着けるためだって木村が…」

「本気で言ってるの?それとも私はバカだから適当に言い逃れようと思って、木村とお母様を守るための口から出まかせ?」

「そんなに敵意をむけないでくれ」

「私はね、優しいよ。優しいぼんやりしたかわいい女の子だよ。そうでしょう?そんな私が好きだから長い恋人がいることを隠して、リスクを犯して学生に手を出したんでしょう?結婚したんでしょう?でも敵意を向けたらもう嫌い?面倒?若い無知で未熟なお人形さんが飼いたかっただけ?軽率に性欲と支配欲に従っただけ?どうして結婚なんてしたの?ペットのままだとうまくやれたのに。お母様に逆らう気なんてさらさらないくせに結婚したのが間違いだよ」

「家族になりたかったんだよ。君の腕の中で死にたいと思ったから結婚したんだ」

「離婚したい」

「そう」

「いいの?」

「僕は君が思ってるほど馬鹿じゃない。君をペットだとも思ってない。でも君にはそれが伝わってないなら別れた方がいいだろうね」

「伝わってないよ」

「そう。残念だよ」

「私の腕の中で死にたいの?」

「ひとりで死ぬよ。それが僕に相応しいから」

「あと100年は死ななさそう」

「そうかもね。別れてもまた会ってよ。ずっと会ってよ」

「あはははは、馬鹿だね」

「ははは、もう馬鹿でいいよ。さみしくなるよ」

 

さようなら。

またいつか。