子どものいる生活

息子のこと、元夫のこと、私の生活のあれこれ。順風満帆。

欠けたまま

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ああ、世界が欠けてゆくと思う。

3月には大事なものが亡くなる。

3年前に自死で弟が亡くなり。

2年前に病気で姉猫が亡くなり。

1年前に突然私の最後の猫が亡くなった。

私の世界はどんどん欠けてゆく。

穴だらけで茫漠としたここはもう知らない世界みたい。

あなたさえいれば私の世界は完璧で完全だと言えた日もあった。

あなたはその時々で違ったけど、その時々で本気で世界は完璧だと言った。

恋の情熱がみせた錯覚でもその世界は美しかった。

恋は錯覚だけど、あの時みた世界の美しさは幻でなく本質だったのだと思う。だから恋は生きる為に必要なのだと確信している。

最初の夫と初めて並んで歩いた時、私の世界は完璧で完全だったなと思い出す。少しも欠けることなく膨張していったキラキラした私の世界を思い出すと笑える。あのとき私は最高に無敵だった。

息子の父親と旅行に行った北海道からの帰路、飛行機の中で彼の肩に頭を預けてうとうとしていた時も世界は完璧だった。

あの日あの人が着ていた柔らかいベストは今も私のクローゼットにある。遺骨みたいに。

恋は錯覚だから。錯覚は相手の感情なんて必要としない。自分だけがみたいものをみる。

だからこそ完璧で美しい。

そんなものは長く続かないけれど。

気持ちいいのはトリップしている間だけと承知でも。

長い人生を、重い人生を生きるのにかつて必要だったキラキラしたものは、もう私の人生には必要なくて、今は無惨に欠けて空いた穴が私には愛おしい。

埋まらない欠けはずっとそこにあるぽかりと空いた穴。

穴でもいいからそこにいてね。

もうなくならないでね。

今度こそずっと一緒にいて。そう思う。

私はずっと悲しい。

私はずっと欠けたままがいい。

キラキラした世界より私が生きたいのは欠けたままの世界。

幸福も完璧もいらない。

ふたりで幸せになろうと瞳孔が開いた目で訴える恋人に伝えたけど伝わらなかったことをここに記す。