子どものいる生活

息子のこと、元夫のこと、私の生活のあれこれ。順風満帆。

2020-01-01から1年間の記事一覧

お月見

十五夜の満月が美しかったのでベランダでお月見をした。 お団子は売り切れていたので、バナナとヨーグルトを入れた小さな丸いパンケーキを焼いて蜂蜜をたっぷりかけて食べた。 狭いベランダに椅子を出して座る。隣には息子。 息子はパンケーキを食べ終わりポ…

草むらの夢

夢の中でこれが夢だとわかっている。そんな夢を見た。 「これは眩しいような緑ですね」 浴衣を着て縁側に座り死んだはずの前夫が私に言った。 目を向けると確かに庭に雑草がぼうぼうと茂りその緑は眩しいくらいに鮮やかだ。 「ほんと」 私は答えた。 前夫は…

声が出なくなる

「過去の僕の依頼者の相手方にもいましたよ。自殺した人。追い詰めた罪悪感はないですね。仕事ですから」 弁護士が笑顔でまるで冗談でも言うように話す。その口ぶりはどこか誇らしげでさえある。 武勇伝のつもりなのかしら。 「死んでくれた方がいい人はいま…

あやむるこころ

小雨が振り出した。開け放った窓から雨の匂いが入ってくる。秋の雨の匂い。ベランダではすっかり乾いたシーツが揺れているのにソファに横たえた体がずっしりと重く取り込みに行けない。 私はなんと涙ぐましいのだろう。 たった1人で戦って。 疲れ果てて。 成…

ヒヨス

ヒヨス、エンジェルトランペット、ハシリドコロ、すずらん、あじさい、彼岸花、毒草について調べている時だけ荒れた感情が凪ぐのを感じる。 息子がお絵かきする隣で図鑑を見ながら毒草を模写する。30色入りのクーピーで丁寧に描く。絵を描くのは子どもの頃か…

梅雨の散歩 夫への感情

「ハート!」 そういって息子が私と夫の手をくっつけてハートの形らしきものを作った。 公園へ向かう途中で、私達は、息子を真ん中にして3人で手を繋いで歩いていた。 「ハート!」 もう一度、息子が私と夫の手をくっつける。 うれしそうに笑って。 私も笑う…

プール掃除

ザッシュ ザッシュ ザッシュ 苔の生えたプールの底をデッキブラシで勢いよく擦ると苔は面白いほどよくとれて、鮮やかな水色の底が見えた。 保育園の休園中にプール掃除をしないかと息子のお友達のお母さんに誘われた時は正直気乗りしなかったけれど、初夏の…

ピンクの色水

いい母親になりたい。 優しい母親になりたい。 息子と仲良く暮らしたい。 話をよく聴いてあげる母親でいたい。 イライラしない母親でいたい。 意地悪な声なんて出さない母親でいたい。 まして怒鳴るなんてとんでもない。 そう思っていた。 そう思っていたの…

夜のお話

5歳の息子は夜寝る前に私にお話をしてもらうのが大好き。 お話というのは、私が即興でつくる童話で、ファンタジーだったり、ミステリーだったり、たまにホラーだったりもする。 息子は毎晩「今日もお話をして!」と私にねだる。 毎日のこととなると、何も思…

怪獣になりたい

早起きした息子と公園の原っぱを散歩しているとごおと風が吹いた。 遮るものが何もない大きな公園の人もまばらな原っぱで感じる風は、どんなに強くても、どんなに髪をボサボサにしても気持ちいい。 私の履いている長い緑色のスカートが勢いよくはためく。 広…

猫元気になりました

前の記事で死にそうだった猫、元気になりました。 肝リピドーシスの症状が強制給餌で改善したからだとの獣医師の見解です。 よかった。 取り急ぎご報告をさせていただきます。

ずっと温かい体で私の側にいてほしい

もってあと数日と今日獣医に言われた猫が私の胸の上でぐるぐると喉を鳴らしている。 電車を乗り継いで連れて行った大学病院の獣医師がもうここまできたら何もできないから最期はおうちでと言ったのだ。 「死ぬんですか?」 と尋ねたら獣医は口を噤んだ。 死…

始まりも終わりもないもの

この前、とても久しぶりに美術館へ絵を観に行った。 絵画と向き合うのは体力がいる行為なので、育児に仕事に疲れているここ何年かは美術館から足が遠いていたのだけど、なんだか無性に絵が観たくなりふらふらと電車に乗って行ってきた。 チケットを買って入…

不倫

芸能人の不倫のニュースに沸くテレビやSNSにくだらないな、馬鹿みたいだなと思いながらも胸がざわつくのは、私がかつて浮気相手だったことがあり、またパートナーの不貞には並々ならぬ増悪感情があるからだろう。 私には浮気相手に選ばれやすいという本当に…

息子のお喋りがしんどい日

深夜2時にパンケーキを焼いている。 猫も息子も寝入っていて静かな家の中をパンケーキの焼ける甘い匂いがただよう。 今日の私は息子に優しい母ではなかった。 パンケーキの生地にポツポツと開いた穴を見ながら甘い匂いで持ち上げようとしていた心がまた落ち…

お母さんはバカが嫌いでしょ

朝、胸元に熊の絵の描いたトレーナーを渡すと息子が「これ着たくないな」と言った。 「そう?じゃあ別のお洋服を持ってくるね」と言って脱衣所に取りに行き、無地のシャツを渡すとパジャマを脱いで着替えた。 息子は熊のトレーナーを手に持って、そこにいる…

今日はとてもいいお天気。 遮光カーテンの隙間から入る日の光が一本の線になって息子の眠る布団に模様を作っている。 光に照らされ浮かび上がった埃。 スースーと息子の寝息。 早朝の寝室はまるで守られた神聖な清らかな場所みたいだと思う。 また海に行きた…

大きな公園

息子と二人暮らしは気儘なもので、お休みの日は大抵10時頃まで布団の中でうとうとしたり、本を読んだりしている。今日もいつも通り2人で暖かな布団の中で本を読んだり、息子は折り紙を折っていた。 エアコンの温風で部屋が十分に温められてからのそのそと起…

父からの連絡

父からLINEがきて、いつもなのだけど、それは絵文字をふんだんに使った、句読点の多い、妙に親しげな文章で、父はその文体で若い愛人にいつも性欲と支配欲ダダ漏れのやり取りをしていることを私は知っていて、その吐きそうな文体で伝えられるのは、弟の一周…

暗闇に落ちないために

スーパーで買った山芋をすって、お醤油を少し垂らして、焼き海苔に包んだら、ジュージューと油で揚げる。 油の匂い。 夕暮れ時。 ベランダに面した大きな窓からは、オレンジ色の大きな夕焼けが見える。 息子は彼専用の小さな椅子にちょこんと座って折り紙で…