子どものいる生活

息子のこと、元夫のこと、私の生活のあれこれ。順風満帆。

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今日はとてもいいお天気。

遮光カーテンの隙間から入る日の光が一本の線になって息子の眠る布団に模様を作っている。

光に照らされ浮かび上がった埃。

スースーと息子の寝息。

早朝の寝室はまるで守られた神聖な清らかな場所みたいだと思う。

 

また海に行きたいなと昨晩息子に言われた。

夏に2人で行った鎌倉の海に。

途中までは夫も一緒で3人だったのだけど台風が来たので夫は帰ったから海に行ったのは2人。

台風の翌日でまだ波は荒く、ゴミが散乱していた。

誰もいない砂浜を息子と散歩して、息子ははしゃいで水に入り転んでびしょ濡れになって二人で笑った。

顔や髪にまで砂をつけて、大笑いする息子。

私はいつもそう思うようにこの日も砂浜で笑う息子を見て、この子は奇跡みたいにかわいいし完璧だと思った。

宿泊したホテルの10年来の付き合いがある支配人も息子の礼儀正しさや可愛らしさを素晴らしいと言い、お会いできて光栄ですとうやうやしくお辞儀したのだが、私が息子を素晴らしいと思うのは彼がお利口にしている時ではなく、決まってむちゃくちゃにやってる時だ。

むちゃくちゃにやってる時の命の勢いみたいなのが好き。もっとやれと思う。もっともっともっともっとって。

 

息子が起きたら彼を保育園に送って行き、私は大学時代の先輩に会うことになっている。

とても久しぶりに会うので楽しみだけど、少し面倒でもある。

先輩は私の前の夫の教え子で、前の夫に心酔し恋い焦がれていた人なのだけど、私に優しい。

私だけじゃなく、おそらく知り合い全てに平等に優しくて、礼儀正しくて、それが当然だと思っている人だ。

私とは全然違う。

きっと今日も気の利いた手土産を持って、適度に流行を取り入れたファッションで、お洒落なお店が予約してあって、私がお手洗いに立っている間に会計を済ますのだろう。

会いたくもない私に会って。

前夫に頼まれた物を私に渡すために。

それにしても前夫が亡くなって数ヶ月経つのに今になって私に何があるのだろうか。

骨かな

と少し思った。

骨はいらないなと。

でも郵送できないと言っていたし、壊れ物だと言っていたから、やっぱり骨かな。

 

寝室の本棚の上に標本箱に入れた貝殻が飾ってある。

前夫と鎌倉の砂浜で拾った貝殻だ。

20代の私が好きな男と手を繋ぎ、海水に足を浸けてははしゃぎ、笑いながら拾った貝殻。

ピンクの小さな貝殻、ゴツゴツした巻貝、トゲトゲした白いの、大きなアンモナイトみたいなもの。

前夫は私がはしゃぎ過ぎて転ぶと君はめちゃくちゃだと喜んだ。

天衣無縫だと。

素晴らしいと。

無邪気な娘を演じて喜ばすことなんて造作もないことなのに。

もっと喜ばせてあげようか、もっともっともっとと思った。

もうずっとずっと昔のこと。

 

骨、もし骨なら、前夫が私に自分の骨を持ってほしいと願うのなら、私、骨、食べようかしらと思っていたら息子が起きた。

 

おはよう。

今日はとてもいいお天気だよ。