息子が珍しく昼間に寝た。
部屋の隅にうずたかく積まれた畳まれていない洗濯物さえ美しく見えるうららから春の日差し。
オーブンからはパンプティングが焼ける甘い香り。
昼寝する息子の頬は発光しそうに白く眩い。
かわいい息子を眺めていると昨日は遅くまで仕事をしていたので、どろりとした眠気に引きずり込まれそうになる。
窓の外は光。
息子がプラネタリウムで落としたカメラが見つかり、それが届く予定なので眠ることはできない。
息子は写真を撮るのが好きで、私の使っていた古いデジカメをプレゼントしたら喜んで、どこに行くにも持っていって写真をたくさん撮る。
息子のとる写真には、はっきりと空気が写っている。
春の公園のけぶる空気、休日のリビングの騒がしい空気、雨の日の寝室の静かな空気、様々な空気を真空パックにしたみたいな彼が撮る写真はとてもいい。
息子は絵があまり上手ではない。
目の前にある対象物を紙の上に再現するというレベルには達しておらず、それどころかお手本がないと具象物を描くのも難しいらしい。
4歳の子どもの絵を描くレベルとしては遅い方だと思う。
彼の描くのは、いつもまる、そして線。それらがうずまくうずまくのびるのびる、しぼむ。
筆圧は弱く、線はゆるゆると頼りない。
何を描いているわけでもなく、描くという行為を楽しむための絵。
手を動かすと、そこに線が表れて、動きの痕跡を残すという行為を楽しんでいる。
私はそんな息子の絵が好きで、額縁に入れていくつも飾っている。
見ていると落ち着くし、部屋が明るくなるから。
息子の絵は春みたいだなと思う。
生まれたての絵だから。
植物の息吹きみたいな絵。
ああ、息子が起きた。
もぞもぞと寝たり起きたりする彼の頭を撫でながら「あなたは春がよく似合うね」と言うと、「かっこいいからね」と得意げに答えた。
そう、かっこいいいよ。
春に芽吹く命そのものみたいだもの。
光みたい。
昼寝の間にあなたのことを考えるのね、幸せって思うよ。